ウルトラマラソンへの道2 [いわて銀河チャレンジ]
誰がこんな暴風雨の中を走りたいと思うのだろう。
NHKニュースによると悪天候でJR京葉線は運休している。
でも、走らなければならない。
そうしないと来月のいわて銀河100kmの完走はおぼつかない。
だから、走る。
一緒に走るのは、イントラMさん。
いわて銀河には今度が4度目の出場になるという。
さすがの天気に、午前7時スタートの予定を8時15分に遅らせた。
1時間の間に雨はたいぶ小降りになったけど、
風はあいかわらず猛烈な勢いで吹きつける。
シューズは家を出た直後にすっかり濡れていた。
それでも水たまりを避けながら走り始めた。
すぐに江戸川を越え、中川に沿って北上する。
イントラMさんは道を熟知している。
走りづらい道や狭い道、小さなアップダウン。
コンビニ、自販機の位置までも。
ペースはキロ7キロ。
そのペースメイクは驚くほど正確だ。
ただ、強い南風は時々、文字通り背中を押してくれる。
おかげで7分を切る状態もしばし続いた。
午前9時過ぎ、ほとんど雨は感じなくなった。
見上げると雲の切れ目から青空が見えてきた。
このまま予報通り晴れるのだろうか。
連休中に距離を走っておきたかった。
今日はもともと暴風雨の予報だったから、
走れないかもしれないと、前日に23kmを走っていた。
スタート前から足には疲労がたまっている。
今日の予定走行距離は50km。
足が持つだろうか。
気力がもつだろうか。
10kmすぎ、自販機でアクエリアスを買う。
身につけているのはボトルホルダー付きのウエストバック1つ。
飲み残したら収納はできるけど、走りづらい。
出来るだけ、半分以上飲むようにした。
15km過ぎて、水元公園にはいる。
公園の規模は都内でも屈指だろう。
雨が上がったおかげで家族連れで賑わっている。
メタセコイアだろうか?
並木が美しかった。
公園を抜けたところで、コンビニでへ。
菓子パンと塩豆大福、カフェオレを摂る。
江戸川の河原に出た。
柴又帝釈天を右手に見て、南下する。
正面から、時々右からも強力な風が走りを邪魔する。
何度も帽子を飛ばされた。
日差しは強いのに暑さを感じないのは風のせいだろう。
遠くに見える市川市のビルや橋が、なかなか近づいてこない。
それでも、一歩一歩進む。
イントラMさんは、この強風に対し、
「足で進むのではなく体は風に預けて、足は支えるために前に出す」という。
風に体を預ける・・・・。
目をつぶってやってみる。
なんとなく分かった気がする。
どんなに長い距離でも、
進み続ければ必ず目的地はやってくる。
見慣れた水門を渡り、常夜灯のある公園に着いた。
ホームグランドに帰ってきた。
ここで33km。
しかし、今日のトレーニングはまだ終わらない。
コンビニで2度目の栄養補給。
ここでイントラMさんの奥様が加わった。
今年もいわて銀河の50kmの部にエントリーをしている。
体はどうしようもなく疲れていたけれど、
元気いっぱいの女性が加わったことで気分一新。
マラソンはメンタルが7割という。
ふたたび走る気力がわいてきた。
江戸川をそのまま南下する。
風はあいかわらず強いけれど、
水門を渡る前と比べれば、いくぶん弱くなった気がする。
正面に見えていたディズニーリゾートは、
近づくにつれて右手に見えるようになる。
ようやく東京湾に出た。
東京湾には白波が立っている。
打ち寄せる波は飛沫をあげて私たちの体に降りかかり、
少しだけほてった体を冷やしてくれる。
40kmを超えた。
ディズニーリゾートに沿って方向を変えると、
今度は追い風に変わった。
これでもう、向かい風は終わったはず。
運動公園で最後の水分補給。
新浦安、そして三番瀬の入り口へ。
いつも走っている道なのだけど、
これまでとは疲れ方はまったく違う。
1分でも、1秒でも、早く休みたい。
早く50kmにならないか?
何度もGPSを見るけれど、
間違ってSTOPボタンを押したのかと思うほど、
距離の数字が変わらない。
私の住むマンションが見えてきたところで、
目標だった50kmをようやく超えた。
一人で50kmを走るトレーニングは可能だろうか?
正直言って、想像ができない。
マラソンはよく、孤独なスポーツだと言われる。
走るつらさも痛みも喜びも、
走っているその人以外にはわからないからだ。
でも、レースで走るまでの過程で、
おそらく多くのランナーは、
ほかの人に支えられた経験があるのではないだろうか。
ふだんのトレーニングでは、
走り終えた時のビールが最高にうまい。
でも、今回は飲みたいと思わなかった。
食欲もわかなかった。
昨年、いわて銀河を走り終えた時もこんな感じだった。
胃が疲れているにちがいない。
本番では、今日の倍を走らなければならない。
さらに標高差500mが足をすり減らすことになる。
ウルトラマラソンへの道は、まだ始まったばかりだ。
コメント 0