第1回いしのまき復興マラソン報告 [石巻復興マラソン]
雨音で目を覚ました。
被災地・宮城県女川町のトレーラーハウス。
やはり今日も降り続くのかもしれない。
前日、雨の中、被災地・石巻を回ったが、
車から降りるたびにぐっしょり濡れた。濡れることに嫌気がさしていた。
小雨の中、朝食に行くと隣のテーブルにランニング姿の家族連れ。
被災地でのマラソンを、私たち同様、楽しみに遠くからやってきたのだ。
女川から石巻駅までは30分強。
ランナーたちはシャトルバスで、15分はかかる運動公園へ移動する。
これまでの運営を考えると、シャトルバスは十分に用意されているのか?
少々心配になった。
会場に着いた。
実は、石巻運動公園に来たのは初めて。
いるいる。全国から復興マラソンのために集まったランナーたちが。
名簿で見る限り、参加者の8割くらいは宮城県内だけど、
東京や名古屋、沖縄からも駆け付けてくれたランナーもいる。
もし、もう少し、オフィシャルツアーが安ければ、
もっと多くの人が参加できたのに、とも思う。
前日、市内を見渡せる日和山で、ランニング姿の女性がいた。
話を聞くと、京都から来ているという。
そして、今日も応援に来る予定とのこと。
どうして、そこまで。熱い気持ちが嬉しかった。
石巻人として思う。
そんな気持ちに、私たちはどうすれば応えられるかな、と。
せめて感謝の気持だけは忘れてはいけないと。
私たち7人に、同じスポーツクラブのスタッフ2名が運動公園で合流した。
昨夜、仕事が終わって新幹線で仙台へ行き、
そして朝、仙台から石巻へやってきたのだ。
それほどマラソンに情熱があるとは思えない。
被災地に興味も、強く持っているとは感じない。
それでも、はるばる出かけて走ることに労力をいとわない。
若さなのだと思う。
実は今回、ランニング仲間に石巻でのマラソンを呼びかけたが、
世代で興味を持つかどうかがはっきりと別れた。
もちろん「石巻に来たい」と言ったのは若い人たちだ。
9時半に聖火台への点灯が行われ、
スタートは10時。
特にMCも盛り上げたというわけではない。
でも、ランナー全員が、ただ走るだけではない何かを期待していたし、
会場の雰囲気を、被災地でのマラソンを感じようとしていた。
左手に聖火台を見てスタートした。
運動公園を出ると、さっそく日本最大の仮設住宅街の中を走る。
「ありがとう」
そんなメッセージを見つけた。
そして、仮設住宅の塀越しに「がんばれー」と手を振る男性。
隣を走るS子さんが早くも目を潤ませていた。
ここで「励ますつもりが励まされた」などと、
聞いたようなセリフを書くつもりはない。
でも、まさに私たちランナーは、それを求めていたのかもしれない。
コースはその後、旧北上川の豊かな水源から広がる田園地帯を走る。
左手に小高い雑木林の山が連なり、水田と山の間には農家の大きな家が点在する。
まさに東北の風情とでも言うべきか。
温かい表情のおじちゃん、おばちゃん、もちろん若い人もいる。
いつしか、応援の人たちとハイタッチを繰り返すようになった。
雨は霧雨。気温は18度くらいだろうか。
走っていると暑く、シャツ1枚でも汗が滴る。
ペースはkm6分少々。
タイムを気にしない私たちにはほどよい。
仲間たちの中では、トップを走るのが三Tさん。
次にスポーツクラブの若い二人。
それを今年フルマラソンを2度走ったH子さんが追う。
僅差でOさん、そしてS子さん、M弓さん、村Tさん、私たちが続く。
折り返し地点があった。
その手前で、三Tさん以外のメンバーとハイタッチできた。
純粋に走ることをレースで楽しむなんて、初めてかもしれない。
何度でも、何人とでも、沿道の人とハイタッチを繰り返す。
雨の中、応援してくれる被災地の人たちは、
なんて穏やかな表情をしているのだろう。
給水は、5kmで取り損なった。
10kmでは「ごめん、ねぐなった(なくなった)」と言われた。
予想通り、15kmもなかった。
でも、農家のおばさんたちがコップを持って、
水を用意していてくれた。
沿道には簡易トイレもなかった。
普通の大会なら、問題になるかもしれない。
でも、今回参加したランナーは、
そんな不手際も含めて、誰もが楽しんでいたのではないか。
15kmをすぎ、かすかに足に痛みを感じるようになった。
ウルトラの疲れはまだ、残っている。
でも、走るのは今だ。
第1回いしのまき復興マラソンを走る喜びを感じるのは今だ。
雨は、いつしか止んでいた。
これなら、打ち合わせ通りにギターを弾くのにちょうどいい。
20km、ギターを手にした三Tさんがいた。
早くゴールした彼は、ギターを用意し待っていてくれたのだ。
黒いアコースティックギターを受け取った。
コードはC。
ポロンと鳴らしてみる。
そしてF。
オーケー。なんとか指は動く。
仮設住宅の間を走りながら、演奏することに決めていた。
「バカなやつがいる」それでいい。
「まじめに走れ」そう言われてもいい。
何かをしたかった。
何もせずには、いられなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
大会前から、facebookでは炎上寸前と言えるほど、
運営側に苦情が殺到していた。
それについて、今回はふれない。
ただ、これだけは伝えたい。
私も仲間も、いしのまき復興マラソンを心から楽しんだとうこと。
そして、素晴らしいイベントを開催してくれた関係者のみなさんと、
沿道で応援をしてくれた石巻のみなさんに、
心から、ありがとうと。