31回NAHAマラソン報告(レース編) [NAHAマラソン]
サブ4を目指すことにした。
ずっと目標に調整してきた、さいたま国際マラソンは欠場。
この機を逃したら、次のフルマラソンは4か月後になってしまう。
それまで、トレーニングをずっと続けるほど勤勉な男ではない。
沿道の応援が魅力のNAHAマラソン、
急いで走るのはもったいないが、背に腹は替えられない。
同宿の香港人男性とタクシーで会場に着いた。
グッドラック!
握手をして別れた。
午前7時30分。
スタートまで90分もあるため、トイレも空いている。
と、さっそくKANPEIさんを発見。
午前8時にはアーチの下で、49歳初挑戦男さんと無事再会。
その友人で病気からの復活で初マラソンに挑戦する男性と、
4人で記念写真を撮った。
このブログを始めて3年近くになる。
人に読んでもらうことより、トレーニング日誌のつもりだった。
始めてみるものだ。
いつしか、書き込みしてくれる方が現れて、
今は貴重なランニング仲間となっている。
同じジムに通う女性に声をかけられた。
ご夫婦で、友人ご夫婦と一緒に参加しているという。
3万人の参加者の中で、こんなふうに出会える偶然が楽しい。
荷物を預けてEブロックに戻ると、
もう集合締め切りの8時20分ぎりぎりだ。
同じスタートブロックのKANPEIさんは、
もうだいぶ前に並んでいるに違いない。
スタートを待つ。
空が青い。
天気予報では曇りのち雨。
朝は、どんよりとした空だった。
それが今、南国の強い日差しが照りつけてくる。
長くは続かないことを祈った。
午前9時。
ゲストのスリムクラブが「いいよー」と声を上げ、号砲が鳴った。
上空には取材ヘリ。
早くもいる、いる。
NAHAマラソン名物・沿道の応援。
旭橋駅周辺の歩道や階段は人でいっぱいだ。
すぐに右折し、国際通りに入る。
3万人のランナーが走るレースにしては、
少々狭く、スピードが出せない。
KANPEIさんが右手に見えた。
声をかけたいが、私は左手を走ることにしていた。
木曜の夜、居酒屋で知り会ったご夫婦が、
4㎞あたりの与儀小学校前で応援してくれている予定だ。
ぜひ、会いたい。
いたいた。
「jack!」
「シーサー、ありがとう!」
スマホで写真を撮ると、すぐに戦列復帰。
さて、これからだ。
もうKANPEIさんの姿は見えない。
先に行っているはず。
少しペースを上げたいが、まだ混雑が続いている。
上りが続く。
DJの声と音楽が聞こえてきた。
隣のランナーが「あれかな?」と言った。
そう、NAHAマラソン名物、YMCAだ。
西城秀樹の歌に合わせて、ランナーもポーズを作る。
なんとなく、楽しい。
混雑のせいだけではなかった。上りが続く。
まだ10kmも来ていないのに、足が苦しい。
GPSを見ると1km6分ペースを割り込んでいる。
このペースが続けば、サブ4は難しいだろう。
気温は25度を超えているはず。
ようやく太陽は姿を消したが、やはり蒸し暑い。
予報通り雨が降れば、少しは楽になるだろうか。
10km。1時間を越えた。
想定外の悪いタイムだ。
おそらく取り返しはきかないだろう。
どうする?
のんびり楽しく行くか?
マラソンは自分に問い続けるスポーツだ。
スピードを上げるか、落とすか、走るか、歩くか、
今、水を摂るか、後にするか?
苦しさから逃れるのは簡単だ。
ゆっくり行けばいい。
歩いたっていい。
でも、それでいいのか、
本当にいいのか?
沿道の人たちは、バナナ、チューチューアイス、
黒糖、ヤクルト、水、キャンディ、ミカン、
かち割り氷、エアサロンパス・・・・・
手に手にエイドを持っている。
サトウキビ畑を過ぎると、折り返し地点になる。
2時間5分が過ぎていた。
確か、つくばマラソンでサブ4に挑戦した時も、
同じくらいで折り返していた。
あの時は4時間3分。もう少しだった。
でも、後半、必死で追い上げての結果だった。
今はあれだけの余力は、ない。
平和祈念公園。
ここが折り返し点というのが、このコースの素晴らしさだ。
ちょっと途絶えていた応援が、また大きくなった。
トマトのエイドがあった。
まるまる1個。しかも大きい。
食べるのに時間がかかった。
ひめゆり記念館。
最初にここを訪ねてから30年になる。
その時、お会いした「語り部」が今年亡くなり記事になった。
ひめゆり学徒隊の方々は、もう全員が引退。
直接話を聞く機会がいよいよなくなってしまった。
沖縄本島の西側に出た。
東シナ海だ。
慶良間諸島がはっきり見えた。
今年の7月、潜水関係の仕事で久しぶりに潜った。
海の透明度は相変わらずだったけど、
見渡す限り続いていた世界屈指のサンゴ礁群は、
点在する程度にまで減っていて、ショックを受けた。
ようやく下りに出た。
少しでもペースを稼ぎたい。
「かち割り」をもらった。
小さなビニール袋に氷が数個。
首を冷やし、頬に当て、口に放り込む。
KANPEIさんは、もっと先に行ってるのだろうか?
私が後ろから追い上げているからと、
意外にスピードアップしているかもしれない。
追いつきたい。追い上げられない。
4時間10分は切れるだろうか?
切りたい。次のレースにつなげるためにも。
30km。3時間2分。
もう、結果は考えない。
だけど、のんびり走ったりはしない。
走る。早く、出来るだけ早く。
さいたま国際の出場を決めてからは、
サブ4だけを目標に走って来た。
目標は目標であって、届かないこともある。
だけど、あきらめて力を抜いたら、
数か月に及ぶトレーニングが徒労に終わってしまう。
糸満に入った。
いよいよ沿道の応援がヒートアップする。
あと10kmを切った。
水が飲みたい。
私設エイドらしいところで、白い紙コップを取った。
一気に飲もうとすると、様子が違った。
牛丼だった。
そういえば、そんな噂も聞いたことがあった。
吉野家の牛丼のエイドがあると。
でも、いまさら返すのは申し訳ない。
走り出し、食べることにした。
飲み込むように食べた。
うまく飲み込めなかった。
のどに引っかかった。
咳をしてみた。
でも、ひっかかった何かは、ひっかかったままだ。
走りながら、何度も。
水らしい私設エイドがあった。
今度は、よく確かめて水をもらい、
牛丼と一緒に流し込んだ。
胃が、重くなった気がした。
かすかに雨を感じる。
天気予報通りに雨が降ってきたのだ。
降っている小雨なら、熱を冷ましてくれる。
呼吸もしやすくなる。
恵みの雨になるのだろうか。
ふと気がつけば、
私の周囲のゼッケンはB,C,Dがほとんどだ。
Aも珍しくはない。
私はE。
それがサブ4レベルのはず。
周囲のA~Dはどういうことだ?
私の実力がアップしたとは思えない。
サバ読んでのエントリーだろうか?
糸満高校野球部の応援グループがいた。
去年も大声で声援していたっけ。
そして、次の春、選抜大会で甲子園の舞台に立った。
NAHAマラソンを思い出しつつ、テレビで応援をしたものだ。
「最後にすごい上りがある」
なっしーこさんが言っていた。
覚えていなかったけれど、
これがそうか。
40km。
もうすぐ4時間になる。
10分は切りたいが、この上りが続いたのでは絶望的だ。
KANPEIさんや、湘南を走っているゴードンさんは、
もうゴールしただろうか?
49歳初挑戦男さんたちはどの辺を走っているだろうか?
なっしーこさんは、すぐ後ろにいるかもしれない。
まぁみぃさんは、本当にゴールで待っているのだろうか。
競技場に入った。
いつもなら、ここで全力疾走をする。
でも、もう表示は4時間14分を過ぎていた。
今、頑張ってどうなる?
何のために走る?
目標は果たせなかった。
ただ、ようやく終わる。
やっと終わる。
このコースで、このコンディションで、
サブ4を達成する実力がなかっただけのことだ。
「完走おめでとうございます!」
それでもボランティアのスタッフが笑顔で迎えてくれた。
めでたくなんかない。完走が目標ではないのだから。
心のこもった笑顔にちょっととまどった。
思えば、走っている時からずっと、前半からずっと、
サブ4が出来なかった言い訳ばかり考えていた気がする。
アップダウンの続く難コースを、4時間少々で完走できたことは幸せなことだ。
笑顔は、心にしみた。
完走率は68㌫だった。
誰にとっても厳しいコンディションだった。
サブ4へのトレーニングは続けなければならない。
トレーニングが終わる日は、たぶん終わることはないのだろう。
体が動くうちは、永遠に。
今夜は打ち上げ。
楽しみだな。
レース編はこれでおしまいです。
長文で失礼しました。
続編も近日中にアップします。
Jackさん
流石です!
ランも流石ですが、この文章、本当に流石です!!
読みやすく、スピード感があるのですね。
大会のレポートはいつ読んでも自分も走っているような気持ちになってい
ましたが、今回は同じ大会に出ていたので、それぞれのシーンを思い出し
VTRを見ている気分になっています。
「YMCA」のところなど思わず「そうだった!」と、、、。
当方は、34km地点で突然激しい痛みと伴に強烈な筋肉の収縮する「こむ
ら返り」を起こしてしまいました。
こむら返りと云うとふくらはぎのはずなのですが、何故か太もも内側でし
た。硬直すると筋肉の形が、ハッキリ分かるものなのですね。
「もう少ない練習量では無理か?」「歳を取ると目標を変えないとダメか
?」などと考えることの多い大会でした。
まあみいさん、49歳初挑戦男さん、Wさん、なっしーこさん
結果はボロボロでしたが、皆様と御一緒出来て本当に楽しい、想い出に残
る大会になりました。
by KANPEI (2015-12-09 10:14)
KANPEIコーチ
過分なおほめの言葉、ありがとうございます。
今回のレースは、どう受け止めればいいのか?
ちょっと悩みますね。
あれほどの難コースだけに、
目標ならずか、よくやったのか。
KANPEIコーチは、すぐ奈良がありますね。
そこで答えが出るかもしれません。
でも、NAHAで鍛えた足が奈良で生きると
信じています。
by jack (2015-12-09 13:35)
お疲れさまでした。
それにお世話になりました。
実は一緒にゴールした友人には
『那覇マラソンの完走率が低い原因は酔っぱらいが多いからだよ、
沖縄らしいよな!』
と言ってました。
勘違いしてました
スゲ〜しんどいコースでした!
関門が気になり何人かのコースの係員に「20キロの制限時間は?」
34キロの制限時間は?」と聞きましたが誰も分かりませんでした。
これも那覇マラソンの面白いところだなと感じました。笑
応援の素晴らしさに沖縄の人情を感じる忘れられない印象に残るレースでした。
那覇マラソン楽しかったです。
by 49歳初挑戦男 (2015-12-09 23:21)
49歳初挑戦男さん
酔っ払いの件、勘違いと言い切れないかも知れません。
那覇の夜は楽しいですし、
事務局から届いた通知には、お酒への注意がありましたよね。
とはいえ、厳しいコースでしたね。
さまざまな要因が重なり、
完走率が低いのかも知れません。
厳しいけれど、楽しいレースですよね。
お疲れ様でした。
by jack (2015-12-09 23:46)
完走率の低さが大会のきつさを物語っていますね。
そんな中、目標のサブ4が無理だとわかってからも粘れたjackさん、強いです!!お疲れ様でした!!
しかし、、、喉が渇いている中、張り切って取った白いカップが牛丼だったんですね。読んでて吹きだしましたよ~!
by じゅんた (2015-12-11 13:59)
「私設エイドらしいところで、白い紙コップを取った。
一気に飲もうとすると、様子が違った。
牛丼だった。」
緊張して読んでいましたが、上記で爆笑してしまいました。
いつも憎いほどうまいですね。
by w (2015-12-11 18:22)
じゅんたさん
正直言って、アップダウンを舐めていました。
走りながら「こんなにしんどかったかな?」
と思っていました。
さて、いよいよ本番ですね。
最後はのんびり
お過ごし下さい。
興奮して眠れなくても、
一晩くらいなら問題ありません。
吉報待ってます
by jack (2015-12-11 22:06)
w隊長
笑い事ではありませんよ。
水が飲みたくて飲みたくて、
一気に飲もうとしたら、
実は牛丼だった。
冗談のような話ですが、
苦しみました。
いやー、参りました
by jack (2015-12-11 22:09)