加計呂麻島を走る<鹿児島県奄美群島> [ラン旅]
おそらく、加計呂麻島と言って、
すぐに位置がわかる人は多くないだろう。
東京から飛行機で鹿児島を経由して奄美空港に。
奄美空港でレンタカーを借りて南部の港・古仁屋港へ。
そして古仁屋港からは海上タクシーに乗り、
ようやくたどり着く。
加計呂麻島はリアス式の海岸線が180kmも続く。
入り江の数だけ小さな集落がある。
ここ、勢里(せり)も4軒だけの小さな集落だ。
仕事に区切りをつけた土曜日の午後6時。
加計呂麻島で走るなら、今しかない。
民宿のおばさんに「ちょっと走ってきます」と言うと、
「忙しいのねえ」と呆れている。
東に向かうことにした。
東側は道路が危険なところがあるというので、
レンタカーでの通行は避けていた。
だから初めて通るルートになる。
道路の両脇にはハイビスカスが咲いていた。
誰かが植えているのか、
それとも野生の花なのか。
どちらにしても、強い品種なのだろう。
集落を抜けると、すぐに坂道になった。
入り江が多いということは、
坂道が多いということでもある。
右手には青い海。
左は崖になっている。
西日を背中に受けてすぐに汗が滴り落ちる。
1キロちょっとで次の集落、佐知克(さちゆき)に着いた。
ここには加計呂麻島唯一の製糖工場がある。
おそらく家の数は10軒くらいだろう。
人の姿は見えない。
佐知克を抜けると上り坂が続く。
民宿を出てから一度も人や車に会ってない。
走っていると、足音に驚いたらしい鳥がバタバタと飛び立つ。
その羽音にこちらもドキっとしてしまう。
よく見かけるのは全身が緑色の鳩のような美しい鳥だ。
後で聞くとアオバトという鳩の一種だった。
ジャングルの中からはほかにも昼夜を問わず甲高い鳥の声がする。
アカショウビンかもしれない。
坂道はずっと続く。
工事現場らしい場所があり、視界が開けていた。
走り始めてちょうど4km。
島の東に太平洋が見えた。
島の西は東シナ海だ。
加計呂麻島はあちこち路肩が崩れていて、
不通の道も多い。
工事現場の先はずっと下りになる。
途中まで下って25分になった。
このまま走って次の集落、秋徳にもいってみたいが、
そうなると、この長い下り坂は、
帰り道では長い上り坂になってしまう。
もう少し走りたいが、
民宿の食事に遅くなるのも申し訳ない。
引き返すことにした。
帰り道でも、アオバトがバタバタと飛んでいく。
時折受ける西日は強烈だが、
ジャングルの木陰の道も増えてきた。
佐知克が見下ろせる。
前回、「隠れ里」を走ったが、
加計呂麻島こそが本当の隠れ里と言えるかもしれない。
汗を滴らせながら下る。
日差しがオレンジ色を帯びてきた。
勢里に入れば平坦な直線コースでゴールだ。
どうせ汗で全身びしょ濡れだ。
民宿に着いたら、目の前の海に飛び込もう。
最高のクールダウンになるはずだ。
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