紀ノ川を渡る<和歌山市> [マラソン]
東京から和歌山へ日帰りすることになった。
仕事は30分で済む。
すぐに帰ってきたのでは味気ない。
だから、やっぱり走ることにした。
和歌山駅に着いたのは午後1時すぎ。
駅の案内所で日帰り温泉施設と銭湯の場所を聞く。
走った後、できれば汗を流したい。
駅ビルの地下で和歌山らーめんを食べる。
その隣に公衆トイレがあったので中を確認。
広い個室があった。
時間がなかったらここで着替えよう。
下見はオッケーだ。
仕事を終え、ふたたび和歌山駅に戻ってきたのは午後3時20分。
帰りの列車は16時55分。
時間がない。
お風呂はあきらめよう。
駅ビルのトイレで着替えて、コインロッカーに貴重品を預けた。
まず、まっすぐ大通りを和歌山城方向へ
1.5kmほどで見事な天守閣が見えてきた。
和歌山は初めてではないけれど、
これほどのお城があるとは知らなかった。
城の中の庭園も見応えがあったし、
和歌山市内を見渡す眺望もなかなかだ。
行ったことはあるけれど、
実はその土地のことを何も知らない。
再び訪ねて、それに気がつくことが多い気がする。
時間がないので天守閣には入らず、すぐ下る。
次は紀ノ川へ一直線だ。
しかし、距離の割には時間がかかる。
とにかく信号が多い。
最初は駅前通りだからと思ったけれど、
横の通りでも信号が多い。
ほとんど車の行き来がないところでも信号で止まる。
走っているとタイミングが悪いのか、
信号のたびに赤に捕まっている気がする。
しかも、赤の時間がやたら長い。
だんだんいらいらしてきた。
とはいえ、紀ノ川に出た。
紀ノ川大橋を渡る。
河口が近く、橋は幹線道路になっているせいだろう。
紀ノ川という情緒のある名前のような、
美しい景観にはほど遠かった。
20年前、北海道で暮らしていた頃、休日はカヌーとキャンプを楽しんでいた。
そんな時、アウトドア雑誌で「紀ノ川でカヌーを楽しむ家族連れ」の写真を見た。
山の間を縫うように流れる美しい川を、
父、母、子供たちがそれぞれが小さなカヤックで下っていた。
青空と山の緑が目にしみた。
いつか家族でこんなきれいな川をカヌーでツーリングしよう。
そんな夢を描いた。
でも、子供が小さい頃は、親は働き盛りのことが多い。
今、振り返ってみるとそうだった。
夢が、夢のまま終わっていたことにさえ気がつかなかった。
「いつか、こうしよう」なんて、所詮は叶わないものかもしれない。
思えば、今年85歳の父は、
「野生の王国」などTVのドキュメンタリー番組を観ながらよく言ったものだ。
「いつか、一緒に行こうな」と。
父は、おそらく一度も海外旅行をせずに生涯を終えることだろう。
紀ノ川大橋を渡りながら、
そんな子供の頃のことを思い出していた。
「いつか一緒に行こうな」は本気で言っていたのだろうか。
橋を渡り終えてすぐUターン。
あまり時間がない。
今度は上流側の歩道を走る。
平日ならもっと車の量が多いのかもしれない。
駅を目指す。
運河のような小さな川沿いに長屋のようなアーケードが続いていた。
夜になったらにぎわうのかもしれない。
小さな路地を走ったせいか、
今度は信号に邪魔されなかった。
途中、コンビニで「汗拭き」を買った。
駅に戻って9.87kmだった。
ちょっと走って10kmちょうどになったところでGPSを止めた。
広いトイレの個室で汗をふき、
下着だけ着替えた。
新大阪に向かう「くろしお11号」の発車時間までまだ6分ある。
改札に着くと特急列車が発車しようとしている。
とりあえず改札を入り、時間を確認しようとすると、
駅の職員らしい女性が声をかけてきた。
「もう出発ですよ」
しかし、まだ16時49分。
おかしいと思いつつ、未確認のまま目の前の車両に乗る。
「何号車ですか?」その女性が車両の外から聞いてくる。
「5号車です」チケットをみながら答える。
「こちら後方の車両です」
お礼を言う前にドアが閉まった。
間一髪。
時間を勘違いしていた。
水分補給できないまま新大阪へ。
混雑していたけれど、
なんとか缶ビールを購入。
新幹線の中で喉を潤した。
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