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いわて銀河チャレンジ100km報告(上) [ウルトラマラソン]

壁だ。
壁が行く手を阻んでいた。
50kmを越えた直後、延々と続いて見えるこの坂道は、
まさしく壁に見えた。

 スタートは午前4時。
ウルトラマラソンでは普通の時刻なのかもしれない。
でも、初挑戦の私は「早く寝ないと」と、そんな気持ちばかりが先に立ち、
結局一睡もしないままスタート時間を迎えてしまった。
 案の定、最初の20kmは意識がもうろうとしていた気がする。
「いつリタイアしようか」そんな気持ちが何度もよぎった。
2015-06-17+08.54.09.jpg
少し楽になったのは30km過ぎのエイドステーション。
おにぎり、梅干し、バナナ、手作り味噌のみそ汁をほおばると、
力が湧いてきた。
眠気もだいぶおさまった。
でも、まだ10時間以上は走り続けなければならない。
この調子がいつまで持続できるだろう。
2015-06-17+08.56.46.jpg
 50km過ぎの壁は、無理をしないことにした。
ここまでゴール時間を計算すると、若干余裕がある。
走って足を減らすより、温存して歩く方を選んだ。
前後のランナーも歩いていた。
標高差約500mというこのコース。
アップダウンは想定していたし、足の痛みも予想はついた。
しかし、歩いていると、時間はどんどん経っていく。 

「再来週、石巻にいきますよ」突然、後ろから声をかけられた。
私の背中の「石巻ランニングクラブ 感謝」
そのメッセージのせいだ。
私も参加する「第1回いしのまき復興マラソン」に東京から仲間とやってくるという。
「では、石巻でまたお会いしましょう」。
昨年、やはりこのレースに参加したが、関門の時間制限で引っかかったという。
「今回はリベンジですよ」そう言い残し、先に行ってしまった。 

それにしても、岩手県はなんて自然が豊かなところだろう。
時折渡る川は、清流と呼ぶのにふさわしい輝きを放つ。
緑の木々の間から、絶え間なく鳥の声、蝉の声、
カエルか何かわからないが、自然の声が聞こえて来る。
遠くの山並みには残雪が見える。
緑のにおいが心地いい。
1b.jpg
しかし、暑い。
天気予報では最高気温が29度になるという。
直射日光に、こう照りつけられるのはかなわない。
少しは曇ってくれないか。

 トンネルがあった。3つのトンネルが続く。
長いのは2km以上あるらしい。
体が冷えるので、そのためのビニールも支給されているほどだ。
でも、おかげで
暑さから逃れられ、
若干下ることからクールダウンになったといえるかもしれない。
1c.jpg
 ここまで、キロ7分ちょっとで走っている。
計算すると、同じペースで行けば1時間半くらい余裕があるはず。
この50km過ぎの急坂を足の温存のために歩いても問題はないだろう。
 温存のために歩く。
思えば、それは逃げていたのかもしれない。
「まだ大丈夫だから歩く」
「今後のことを考えて、休む」
「暑いから今回はダメだった」
「寝不足だから、失敗した」
心は弱いものだ。
次々と、完走出来なかった時の理由が浮かんでくる。
完走を期待してくれている仲間の顔を思い浮かべた。
ランニング仲間たちは、私の完走を疑ってないだろう。

完走出来なかったら…いや、考えないことにした。
走ろう。
走ろう。
走り始める。足が痛む。
でも、走ろう。
走ることを止めると、走れなくなる。
走ろう。
今が勝負だ。

でも、その後も勝負はその後も延々と続くことになる。(中へ続く)


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コメント 3

w

「清流と呼ぶのにふさわしい輝きを放つ。...
遠くの山並みには残雪が見える。
緑のにおいが心地いい。」
100kmを走る人の表現ではないですね。
完走出来ていなかったら”詩人”にならないで「真面目に走れ!」だね。
しかし、相変わらず解かりやすくて上手いな~

過酷なレースを制して、ヒーローだ!おめでとう!
by (2015-06-17 00:48) 

じゅんた

Jackさん、完走おめでとうございましたー!!
すごいですね。初ウルトラで完走ですもんね。

僕はウルトラは絶対出ないと思っていたんですが、気が変わってきました。Jackさんや友人、ブログで出会った方達の今シーズンの初ウルトラに出たブログを見ていたら、何か出たくなってきました。
辛すぎて涙を流していたり、体ボロボロになって完走出来た方がいたり、友人は限界まで頑張っての70kmで棄権だったり・・・
普通やっぱり自分は出たくないってなるはずが、逆に出たいって気持ちになってきました。う~ん。挑戦心がうずくと言いますか・・・
マラソンにはまったからには一度はウルトラ出てみたいですね。
ただ完走出来る気は全くおきませんが!!!もし出ると決まったら相当走り込まなきゃいけませんよね?
どんな練習すればいいんでしょうか?

14時間で完走しちゃうと、24時間で100km走るTV見ても感動が薄れそうですね。笑


by じゅんた (2015-06-17 13:05) 

jack

>隊長
フルと違ってゆっくり走れるので、
五感にいろいろ感じながら走れるんですね。
「過酷」といえば過酷なのですが、
楽しかった記憶の方が大きいです。

>じゅんたさん
ありがとうございます。
初のウルトラは、やっぱりきついです。
でも、それはわかっていたこと。
そう開き直ってしまえば、いいのかと。
もちろん大勢がリタイアしますが、
「リベンジだ~!」などと再挑戦の楽しみもありますね。

練習は、「ゆっくりと、キロ7分10秒ペースで」と教わりました。
でも、じゅんたさん、まずはフルの達成感を味わってください。


by jack (2015-06-17 14:06) 

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